疑問その1(軽度~中程度の遠視)
遠視は見えすぎるぐらいよく見える目のことだと思っているのでしたら、それは大きな間違いです。
遠視が弱い場合、子供さんはそれを打ち消すことができるので視力は1.0以上、時には1.5~2.0のこともあり、確かによく見えます。
しかし、ある一定限度以上の遠視ですと、遠くは見えても近くを見る時は目に無理がかかり疲れやすく、読書嫌い、勉強嫌いになったり、行(ぎょう)を飛ばして本を読むことから注意力散漫のレッテルを貼られてしまうことがあります。
また、元々潜在的に弱い遠視があると、成人になってから早期に目の疲れや老眼を感じることがあります。
このように、遠くよりも近くが見にくいのが遠視の特徴です。
これは遠くが見にくく、近くが見やすい近視とは全く正反対の現象です。
学校の検診は遠くを見る視力しか検査しませんので、遠くを見る視力が良好であるとメガネは不要と思われがちです。
しかし、遠視の子供さんたちにメガネを装用させますと、近くが楽に無理なく見えるため本が読みやすくなった、勉強の能率があがったと言います。
今まで当院でも、この様な子供さんを何人もみてきました。
遠視が中程度以上の子供さんに、メガネをかけさせないと将来視力が十分出ないことがありますのでご注意してください。
疑問その2(高度の遠視)
遠視が強いと近くも遠くもよく見えません。
近視がいくら強くても顔を近づければ必ずピントが合ってはっきりものを見ることができるのに比べ、遠視が強いとピントがほとんど合いません。
それでも日常生活では結構見えているように振舞うのですが、視力はかなり落ち、検診の機会でもなければ親もほとんど気がつきません。
子供さんによってはまぶしがったり、片目でテレビをみたり、横目でものをみたりすることもあります。
しかしほとんどの場合、外観からはわかりません。
その上、生まれてからずっとそのようなピンボケの中で成長してきているので、本人も「コンナモノ」と思っており、見にくいとは訴えません。
このような子供さんにメガネをかけさせると日常の行動が活発になり、勉強好きになったり、朝起きると自分からメガネを探してかけるようになり、徐々にメガネに慣れていきます。
人間の脳の中に、ものを見る機能を司っている部分を視覚領と言います。 遠視の強い子供さんでは視覚領は他の部分の脳に比べて成長が遅れています。
そのためにメガネで鮮明な像を与えることによって初めて目も成長します。
遠視の度数が強すぎたり、メガネをかける時期が遅れたりすると、弱視といって視力が出なくなりますがご心配はいりません。
早期にメガネをかけさせれば視力は向上します。
メガネをかけさせないことがその子供さんにとって一番怖いことなのです。
視力回復センター(仮称)とかいう所に通っていた子供さんたちもたくさん知っています。
メガネをはずして、ものをみさせる訓練をすることは、遠視の子供さんにとって疲れるばかりか、害になります。
その日の体調や視力表に対する慣れから視力が0.1~0.3良くなることもありますが、それは遠視が良くなったのではありません。
一刻も早くメガネをかけさせてこれを習慣にすることが大事で、残念ながら遠視の強い子供さんには現在はメガネで矯正するしか方法がありません。
安心(早期発見・早期治療)
これまで怖いことばかりお話してきましたが、最後にちょっぴり安心できることをお話します。
それは早期発見、早期治療により子供さんの遠視は必ず良くなるというお話です。
メガネをかけてピントの合った像を見続けていると、徐々にではありますが遠視の度が少しずつ弱くなっていくことがあります。
子供さんによっては1年に1回、メガネの度数を弱くしていくことがあります。
ですから、遠視が軽い場合は将来メガネが不要となることもあります。
そのためにも、まずはメガネをかけさせて下さい。
遠視が強い場合でもメガネの度数が弱くなり、メガネの重さが軽くなることが期待されます。
メガネの度数の変更はメガネ屋さんで勝手にしないで下さい。
これはかなり難しい判断を必要としますので必ず私たちが充分検査したあとお出しする指示にしたがって下さい。
新しいメガネができて初めてかけた時、少し見にくいことがあります。
そのときはメガネに早く慣れさせる方法で徐々に見えてきますのでご心配ありません。
また、子供さんが遠視のメガネをかけても「少し見にくくなった」と言われたら、遠視の度数が予想以上に弱くなったことも考えられますので一度ご来院下さい。